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アスペルガー症候群の人が「盗み」をする理由とは?

 

アスペルガー症候群の人が「盗み」をする理由とは?

 

アスペルガー症候群の子どもが、盗み癖があって困る、ということを聞いたことがありませんか?

 

 

 

実際に、発達障害に関するポータルサイトなどでは、
この手の相談がよくされています。

 

この記事では、
アスペルガー症候群/自閉症スペクトラム障害の子どもが「盗み」をしてしまうメカニズムを考察し、
では、実際に、その子たちに対して、どういった対応を親や大人である私たちがしていくかを見ていきたいと思います。

 

 

アスペルガー症候群の特徴や特性を知るためには、
岡田尊司さんの「アスペルガー症候群」を一読しておくことをすすめます。

 

岡田尊司さんの「アスペルガー症候群」のレビューはこちら。

 

さらに、私が読んでいただきたいのが、
『活かそう!発達障害脳〜「いいところを伸ばす」は治療です。〜』
(著・長沼睦夫 花風社 2011年6月26日)

 

この花風社は、発達障害に関する本を中心に出版する、
ちょっと変わった出版社さんです。

 

 

今、一般的に発売されている発達障害に関する本の二歩三歩先をいく内容が載っている本が多いです。

 

 

私も意識的に買うようにしています。

 

この『活かそう!発達障害脳〜「いいところを伸ばす」は治療です。〜』において、
長沼さんがこのようなことを述べています。

 

P29ページになります。

 

最近の自閉症の脳研究では、自閉症脳ではさまざまな長い神経線維の伝導網構築が減少し、局所の神経線維では増加していたと報告されています。この「長距離接続の低下」と「局所接続の強化」という神経発達の特徴の結果、社会性やコミュニケーションなどの高度の情報処理が苦手になり、局所や細部に特化した情報処理が得意になる傾向が生じるのではないかと議論されています。
『活かそう!発達障害脳〜「いいところを伸ばす」は治療です。〜』
(著・長沼睦夫 花風社 2011年6月26日)

 

この本は、長沼先生と、花風社の社長もされている浅見さんとの対談という形で進んでいきます。

 

長沼先生との対談の中で、浅見さんはP33でこのようなことをおっしゃいます。

 

私は一部の自閉症スペクトラムの人を見ていて「過去にダメだったから今度もダメに違いない」ってあきらめてしまうので実は歯がゆい思いをすることがあります。それは過去志向が強い脳みそだからなのですね。
『活かそう!発達障害脳〜「いいところを伸ばす」は治療です。〜』
(著・長沼睦夫 花風社 2011年6月26日)

とあります。

 

つまり、アスペルガー症候群/自閉症スペクトラム障害の方は、過去に思いを馳せることが多く、
そこで、ダメだったから、今回もダメだと決めつけてしまう傾向が強いということです。

 

 

これは、アスペルガー症候群の改善をはかる「ASミラクルナビ」でも同じことが言われています。

 

過去にダメだったからといって、これからもダメ、ということはないのだと。
必ず、治せる、と思えば、改善できる!

 

ということを何度もその中で、著者さんは訴えます。

 

 

少し話がそれてしまいましたが、
この2つの特徴、アスペルガー症候群の人は細部や今、断片的な記憶がよく残り、
過去がダメだったら、今回もダメだと諦めてしまう。

 

という特徴がわかります。

 

これが、アスペルガー症候群のお子さんの「盗み癖」につながります。

 

アスペルガー症候群の子の、
特に、積極奇異型と呼ばれる子にこの「盗み癖」が見られます。

 

 

彼らの言葉の癖として、「〜ちょうだい」「〜して」というお願いがあります。

 

欲しくなるとどうにも止められないんです。
それは、この長沼先生の本の主張と重なります。局所や細部がすごく気になる。
1度、何かが欲しくなると、止められなくなる、という状態になるんだと考えられます。

 

そして、それが続くことは、彼らには強いストレスになる。

 

それを、なんとかするためには、「盗む」という行為になるわけです。
さらに、想像を働かせて、今、「盗む」という行為をすれば、将来的に、もっと「ひどい」ことになる。
という考えをしていくことも苦手なので、すぐに「盗む」ということをしてしまいます。

 

 

また、ご両親に厳しく育てられると、
どうせ、欲しいものは手に入らない、と考えてしまいます。
だったら、「盗む」ことで、手に入れる、ということになるんです。

 

 

アスペルガー症候群の子の脳の特性上、「盗む」という行為に走りやすい。

 

 

気になってしまうと止められない。
どうせ、自分はおもちゃや欲しいものを買ってもらえない。(そういう記憶が強ければ強いほどそうなる)
なので、どうやっても、手に入れたらいいということになっていきます。

 

また、アスペルガー症候群の子は、言葉を広い意味で捉えることが苦手です。

 

「盗む」という行為を、黙って人のものを取る、という行為だと理解していると、
友だちに「貸して」と言って、借りて返さないのは「盗む」という行為ではない、と思っているときもあります。
(実際はどうかはわかりませんが、こういうケースもあるという例です)

 

 

本当に借りるだけと思っていて、
そのまま忘れてしまうこともよくあります。

 

 

もちろん、大人から見て「盗む」という行為を行っている場合、
それを放っておくことはいけませんが、こういう脳の特性があるということは理解しておくと、
対処の仕方があると思います。

 

 

では、アスペルガー症候群/自閉症スペクトラム障害の子の盗み癖を改善するにはどうしたらいいか。

 

 

アスペルガー症候群/自閉症スペクトラム障害のお子さんが、
今までの記憶を書き換えることは容易ではありません。

 

 

過去のAという行動があったとして、
それは、間違っていたから、Bという社会的に正しい行動にしよう。

 

という判断は、ほぼできないと考えておきましょう。

 

 

なので、人のものを盗んではいけない、と諭すだけでは、
彼らの行動は直りません。

 

 

というか、直せないのです。

 

同じ行動を繰り返してしまう、そういう特性を持ってしまっているからです。

 

 

では、どうしたらいいのか?

 

 

新しい習慣をつくってやればいいのです。

 

 

彼らも怒られるのは嫌いです。

 

 

だから、新しい方法を提案してあげるんです。
前の行動を改めることは苦手ですが、新しい、面白いことには前向きです。

 

たとえば、
家のお手伝いや、宿題を遊ぶ前にきちんとできた、など、
毎日のルール、ご褒美ポイントを決めて、できたら表にシールを貼っていく。

 

そのシールが、何枚たまったら、
欲しいものを買ってあげる、というような形式です。

 

 

細部にこだわる傾向が強いので、
この「収集」するというのは彼らは好きになる可能性が高いです。

 

 

「盗む」と怒られる。
だから、自分の中で「盗む」という行為ではない方法で、
何としてでも集める。

 

 

こういう行動をやめさせるには、
新しい方法を親が提案してあげるんです。

 

 

欲しいものは欲しいという彼らの行動を止めることはできません。

 

 

 

 

なので、新しい、そして、彼らがハマりやすい方法を提案してあげる。

 

 

そして、きちんとシールが溜まったり、
ご褒美ポイントがたまったら、ちゃんと欲しいものを与えてあげる。

 

 

そうすると、彼らの中に、
シールを貯めれば、本当にご褒美がもらえる。

 

 

という新しい記憶がつくられます。

 

 

過去にダメだったことを、いつまでも引きずる。

 

 

の反対は、

 

 

過去に成功したことも、いつまでも繰り返す。

 

 

です。

 

 

なので、彼らの欲求を満たす新しいゲームを提案してあげる。

 

 

ということが大事です。

 

 

ただし、今度は、これをやりすぎると、中学生、高校生になって、
大人にこんなことを言うようになります。

 

 

「俺が、(私が)、いい点とったら、何くれる?」

 

 

今度は、自分が成果をあげれば、大人はものをくれると学習するんですね。

 

だから、中学生以上になってきたら、
お小遣いの中でやりくりする方法などを学ばせていかなければいけません。

 

 

そのことを頭におきつつ、
「盗む」という行為をやめさせるには、
新しい自分の欲しいものを手に入れる方法をお子さんに与えてくださいね。

 

 

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