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『発達障害でも働けますか?』のレビュー|これが仕事の本質

 

『発達障害でも働けますか?』レビュー・その1『欲しかった1冊』

 

 

こちらは、アメブロに掲載した前編です。
https://ameblo.jp/hiroahattatsu/entry-12537460564.html

 

少しレビューが長くなるので、前後編にわけます。

 

私が教師をしていたころ、東大の佐藤学先生が「学びの共同体」という授業方法を提唱していました。

 

今はおそらくあるところではさらに進化していたり、研究が進んでいるとは思います。

 

これは4人1組を1つのグループとして、
授業をグループ学習で進めていくというスタイルのものです。

 

この場合、教師の仕事はいかに準備をするかということになります。

 

どうして、私がこの話をしたかというと、
「学びの共同体」はその当時でもかなり効果的なやり方がわかっていました。

 

4人組で、特に男女半々が良いなど、です。

 

当時から、学校にいる子どもたちの学力差は問題となっており(特に公立の学校において)、
その学力差を埋める、そして、子どもの学力だけではなく、人間性、コミュニケーション能力の向上も授業の中ではかることができる方法として注目を浴びていました。

 

ある程度の枠組みがあるからこそ、実践する中で、細かいケースバイケースが生まれていきます。
実践のノウハウが蓄積されます。
だからこそ、ちょっと聞きかじった程度の私でも実践することができました。

 

授業の準備、めっちゃ大変ですし、失敗もけっこうしました。
教科をもったクラスの担任の先生に注意を受けたこともありました。

 

それでも、なんとかんとか実践できたのは、もとになる考えや理論がはっきりとあったからでした。

 

あと、同じ単元であれば、先輩のプリントと授業の流れをそのまま取り入れることができます。

 

準備は大変ですが、結果が出やすい、完成度の高い授業モデルは使いまわすことができます。
こういうノウハウが共有されていけば、経験値の少ない若手でも授業の質を担保できます。

 

まあ、めっちゃ反対もありましたけどね。グループ学習嫌いな教師も一定数いるんで。

 

さて、話をもどして。
発達障害の方のための働く論って、いろんな本が出てはいるんですが、
この「学びの共同体」のような土台となるものがずっとないなぁって思っていました。

 

長所を生かす。
なんとかかんとかワーカーが企業と発達障害を持つ人の橋渡しをする。
まわりに理解をしてもらう。

 

そんな理想的な場所なんてねーよ。

 

とそういった本を読むたびに思っていました。

 

自分の力と、
欲しい給料と、
生まれ育った場所と、

 

いろんな状況・環境の中で、そこでとれる現実的な選択肢を選んでいく。

 

働くってそういうことですよね。

 

「学びの共同体」は子どもたちの学習環境の「現実」から生まれていったものですし、
土台があったからこそ、実践のノウハウが積み重ねられていっています。

 

こういうものが発達障害と診断されて、社会へ出ていく人たちにも必要じゃないかと常々思っていました。

 

現実の中から生まれた考えや理論というべきものでしょうか。

 

生きるっていうことは「変化をもとめられる」ということです。

 

こんなふうな言い回しは嫌な方もいるでしょうが、
神様は時としていじわるで私たちにその時には乗り越えることが不可能に思える「壁」を用意します。

 

みなさん、意識をしているかしていないかはありますが、
その突然やってくる壁・アクシデントを乗り越えて成長しているんですよね。

 

偉そうなこと書いていますが、私だってこういう壁はできれば来ないでほしいですよ(笑)

 

ライフハックというか、役に立つノウハウ集みたいな本もありますよね。
あれはあれで役に立つと思います。

 

でも、そういうものは常にどんな場所でもそれをしていればすべてが解決するものでもない。
最悪の場合、一時的に、その場はしのげても問題が時間を経て大きくなっているというケースもあるでしょう。

 

ほかにも、発達障害を公言されている有名な方の自伝的な仕事や生き方に対する考えを書いた本もあります。
私自身はそういった本は好きで読みますが、あくまで個人のケースであり、そのマインドは学べたとしてもその1冊で生きていけるほど人生って甘いものではありません。

 

本当に働くという心構えから書いてくれる本。

 

でも、そんな本を書くとするなら、発達障害の世界では「言っちゃいけない」と暗黙のうちにされてしまったことを書かなくてはいけない。
みなさん、ちゃんとそこは意識なのか無意識なのか避けて書かれていました(苦笑)
それをこれでもかと書いてくれた1冊が『発達障害でも働けますか?』ですね。

 

だけど、その発達障害の方には「言っちゃいけない」と暗黙にになっているところから、そこから逃げてはいけないところだってあるんです。

 

なぜなら、発達障害の理解がすすんでいるから。

 

発達障害の理解がすすむというのは発達障害の人の理解が進み、まわりが受け入れてくれるという正の面だけが広がっていくわけではありません。

 

社会人としての扱いづらさや育てにくさという負の面も同時に広がっていきます。

 

だからこそ、就労支援のある部分では給料という人生そのものともいえるものを削ることで、
発達障害と診断された方を会社が雇うという形があるわけです。

 

会社というのは利益を生まなければ存続はできません。
ある程度の経営・営業システムをつくっているとはいっても、自分の給料以上に稼げる人材にしなければ、会社は赤字となりつぶれてしまいます。

 

あと普通に考えて、

 

最初は教えてもらう立場だったり、アシスタントだったりする中で、
ひとりで仕事をするプレイヤーとなり、
部下を持つマネージャーとなっていく。

 

会社の中で求められる能力も徐々に変わっていくと思います。

 

そこに対応できないと、下手をすれば切られる時代です。

 

個人的にはそういうリスクにも備えて複業が大切だと思っていますが、
これはこれで話が長くなるのでまたの機会にしたいと思います。
(もちろん、本にはここに関する指摘もあります。)

 

社会に求められる人材とは何か?
一度、発達障害という言葉から離れて考えてみる。

 

そのうえで、現在の発達障害の支援と社会のミスマッチをあぶりだし、
現実的にどこからはじめてどこを目指していくか。

 

これをきちんと私たちが理解できる「言葉」にしてくれたのがこの本です。

 

レビューって、一応テクニックとして、欠点というかよくない点を書くことで信憑性が増すといわれます。

 

ただ、この本はこういう本が欲しかったという自分にとって、ほめるところしかなく嘘くさいレビューになるかもしれません。

 

この本は学校の現実の中で生まれた「学びの共同体」のように個々人が実践をしていく上での核となるものがきちんと書かれており、
有名な方の自伝やノウハウを活かせる土台を作ることができる本です。

 

社会がどういうものか?
会社とはどういうものか?
そこで成長していくためには何が必要か?

 

そして、発達障害の方々を取り巻く環境と社会とのずれがどこにあるのか?

 

そのひとつひとつをきちんと言葉にしてくれている本です。

 

もちろん、個々人によって違いはあるでしょう。

 

それはそれでいいんです。

 

大事なことはずれていることを知らない人がそのずれを意識できるかどうかだからです。
知らないと変えることができないからです。

 

そして、多くの、特に保護者の方は「よくぞ言ってくれた!」とこの本を読むと感じるのではないでしょうか?

 

私自身がそう感じたからです。

 

もっと言ってしまえば、この本を読んで「だよね〜。」って言える親御さんに育てられているお子さんはおそらく心配いりませんし、「そうだよね。」って言える社会人当事者、これからなる人もおそらく心配ないでしょう。

 

マインド的には大丈夫でも、山もあれば谷もあるのが人生なので、
それとこれとはわけてくださいね。

 

とにかく、社会という枠組みの中で、会社の中で、評価される人材とは何か?成果を出し続けられる人間には何が必要か?
これを教えてくれる本です。

 

そして、今、発達障害と診断されていたとしても、
きちんと社会で会社の中で評価される人材になれる具体的な戦略を教えてくれる本です。

 

こういう本は今までなかったので非常に貴重です。
ぜひ、手に取ってください。

 

 

 

 

 

 

『発達障害でも働けますか?』のレビュー|相対評価ということ。

『発達障害でも働けますか?』レビュー・その2『相対評価なんですよ、それって。』

 

 

こちらはアメブロに掲載したレビューの後編です。
https://ameblo.jp/hiroahattatsu/entry-12537795600.html

 

今日、このレビューを書いている日に競馬では菊花賞がありました。

 

結果は知っている人もいると思いますが、
武豊騎手が50歳にして菊花賞5回目の勝利。

 

昭和、平成、令和と菊花賞を制しました。

 

天才といわれていますが、大きな怪我からの挫折や、ほかにもいろいろ実はあったり、
その道は決して平坦なものではありませんでした。

 

武豊騎手は大の競馬好きで知られていますが、
その武豊騎手が競馬が面白くなかったという時期があったそうです。

 

その苦しい時期を乗り越え、キズナやキタサンブラックという名馬の背中に彼はいて、そして、令和初の菊花賞制覇。

 

50歳を迎えて、まだ、第一線にいらっしゃいます。

 

競馬でも、野球でも、サッカーでも、なんでもいいんですが、
ひとつの好きなものを追いかけていると、スター選手のひとりやふたりに出会うと思います。

 

そして、どれだけ10年に1人の逸材などといわれる人でも、
常に順風満帆にいっているわけではないということに気がつくはずです。

 

どれだけ才能に恵まれても、
右肩上がりでずっといい状態が続く人などいません。

 

むしろ、ダメだった時にどう立ち上がるのか?

 

これがその人の真価を決めるのでは?

 

私は最近、そう思うんです。

 

失敗をしたときにどう立ち上がるか?
失敗からどう学ぶか?
失敗しても立ち上がるメンタルをどうつくっていくか?

 

 

 

『発達障害でも働けますか?』が書いてくれているのはそこなんです。
(そこ「だけ」ということではないですよ。)

 

私はレビューっていうのは、
レビューをする人の切り口でその商品やサービスについて語り、付加価値をつける行為だと考えています。

 

この本はサブタイトルにあるとおり、
「経済的自立とその先を目指すための成長戦略」のための本です。

 

私はその成長を続けるためには、失敗から立ち直る、立ち上がる必要があると思っています。

 

という私も失敗をたくさんしてきました。
今でも思い出すだけで、凹んでしまうことが多々あります。

 

それは失敗自体に対する嫌な思いもありますし、
もっとうまく失敗から学べたら良かったなと思うことが多かったのもあります。

 

『発達障害でも働けますか?』にもっとはやく出会いたかったというレビューもいくつか見られましたが、
この本にもっと早く出会えていたら失敗からの立ち直りや学びをもっとうまくできたのにな、という思いからではないかと思います。

 

社会におけるコミュニケーションとは?
社会におけるストレスのとらえ方・考え方とは?
トラブルがあるという前提で成長を目指すには?

 

コミュニケーションはうまくいかないものだし、
ストレスっていうのはやってくるものだし、
トラブルも社会や会社の中ではつきもの。

 

それを織り込み済みで成長していくにはどうすればよいか?

 

この本の凄さは、これを「言語化」しているということです。

 

わかっていても嫌なものですよね、これって。

 

でも、その嫌なものの中に実は成長の種が埋まっているんですよね。

 

必死に生きていれば、絶対に誰しもが経験していると思うんです。

 

最悪や〜って感じた出来事が、
年月が経つと「あれ?あの出来事があったから、今の自分のこの位置があるやん。」って。

 

この本に共感される方って、おそらくその経験を記憶していて、
だからこそ、言葉にできるかどうかはあるかもしれませんがこの本を読んで「わかる〜」ってなるのだと思います。

 

現実の「壁」に対する対処方法。

 

テクニック的なものももちろん書かれていはいますが、
最も大事なことはそれに対抗できる「身体」をつくること。

 

この本の最大の魅力は社会に出て働くうえで必ずやってくる問題について扱いながら、
その問題と向き合いながら成長できる「心身」の作り方が書かれていることなんです。

 

私はいろんな発達障害の方の自伝的な本を読んできましたが、
彼らが成功した理由は「体力」だと思っています。

 

「体力」があったからなんとかなったとほとんどの方は意識されてませんが。

 

彼らが「実はこんなこともしちゃってたんですよね、テヘ」的に紹介しているエピソードのほとんどが、
そもそも体力なかったらそんなことできないよ!っていうエピソードばかりだったんです。

 

失敗することをゼロにするのではなく、
たとえ、失敗しても立ち上がれる「心身」をつくっておく。

 

そのための具体的な方策がのっているのがこの本なんです。

 

発達障害を改善するための身体的アプローチは、
そもそも心身の健やかな発達、成長を促すものですから、社会や会社の中でやってくるさまざまなトラブルに対応できる「心身」をつくっていくことにもつながっていきます。

 

その場その場的なテクニックだけではなくて、
社会に出るために、社会に出てからもひとりで歩いていけるために、
個人の体・心と社会のつながりを教えてくれる本になっています。

 

社会に出て壁や不満が出てくるのは、
あなたや私の評価というのが絶対的な評価ではなくて、他者との比較における相対評価だからです。

 

これは、『発達障害でも働けますか?』の134ページで詳しく書かれています。

 

その場、その時の評価だったり、ひとまずの結果というのは、
この他者との比較における評価なんですね。

 

私が支援クラスにいるお子さんが精神的に弱いなと感じるのはこれになれていないことです。

 

かなり下駄をはかせてもらった絶対評価をしてもらえる環境が長ければ長いほど弱くなってしまいます。

 

それは、受験にしろ、就職試験にしろ、あなたや私への評価は絶対的な評価ではなく、相対的評価でなされるからです。

 

受験であれば、去年なら受かった点数を取っていても、
今年はいい受験生がそろってしまい不合格ということがあるわけです。

 

人生の岐路にはどこかの時点で他者に勝つ必要も出てくるわけです。

 

「ありのまま」では超えられない壁が確かに存在し、
一部のいろんなことに恵まれた人が「ありのまま」で相対的にも抜けた存在になり得ることがあるということです。

 

そして、その一部の人は突き抜けた体力を持っているケースがほとんどでもあります。

 

話を戻しますが、この本の優れたところは、

 

個人が社会に出ていく上で出てくる壁をどう乗り越えるかということ。
その壁のひとつが相対的な評価からくるものであったり、壁の正体についての言及があること。
脳や体という人間の持っているものの特性を踏まえながら、社会に出て働き続けることへの提言があること。

 

社会・会社で働くことの問題に幅広く答えながら、
一方で、脳や心身といった人間の内側のところと社会で働く外側のところのつながりにまで指摘している。

 

簡単に言えば、「すごい本」です。

 

ちょっとそこらの働き論とはレベルが違います。

 

ただ、花風社さんの本の最初がこの本だと、
その価値が十分に伝わらないかもしれないなと思うところもあります。

 

いくつかの本を読んで、またこの本に戻ってくるとその価値に改めて気づけると思います。

 

これ、書いていいのかちょっと迷ったんですが、
この本を素直に「わかる!」って思える人って、社会でも勝ち組というか、
もうすでにほかの人より社会でうまくやれている人なんじゃないかなぁって思います。

 

子どもを育てている人なら、子育てがうまいんだろうなぁっていうか。

 

個人が社会に出て働くというのは勝ち負けではないので、そこには触れないようにされていたんでしょうけど、
この本をしっかり読みこんで実践して、社会で評価されるっていうことは、その時その場所で誰かに「勝って」いるわけです。

 

個人の成長も究極的には相対評価だと言えると思います。
外部から評価されるという点においては。

 

だから、この本って残酷な面もあって、
この本を高く評価できる人は、本人に自覚があるかは別としてすでに他者に勝っている、
あるいは勝てる資質をすでに持っている人なんじゃないかと。

 

社会に出て自立をしてその先を目指すっていうのは、
社会に出て一定の評価をされ続けるということだと思います。

 

つまり、あるところである面では、他者に勝つ必要が出てきます。

 

社会において「勝つ」というのはスポーツのように相手を「負かす」ことではありません。

 

こういう仕事ならこの人に任せたいな、と思われる人のことです。

 

その相手が上司なのか、お客さんなのかという違いがあったとして。

 

そして、それは評価される痛みも引き受ける必要があるわけです。

 

その「覚悟」というのか「強さ」というのか、
そういうのを持っている、持とうと思っている人はこの本を高く評価するんじゃないか。

 

と思いました。

 

この本の中身自体は【経済的自立とその先を目指すための成長戦略】なんですけど、
この本を読む人間の覚悟や意志を試されているように思いました。
私だけかも(笑)

 

この本を読んで私は改めて自分の人生を【やってやろう!】と思いました。

 

ノウハウを実践するっていうだけじゃなくて。

 

そんな気にさせてくれる本でした。
全然、精神論じゃなくて、具体的なノウハウが提示されているのに不思議ですけどね。

 

というわけで、もう少し中身について深く書くつもりが、
私の感想が強く出てしまいました。

 

前後編とあわせて、サイトの方でまとめたレビューをどこかであげるつもりです。

 

というわけで、『発達障害でも働けますか?』のレビュー・その2でした。

 

 

 

 

 

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