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『夫婦の危機は発達障害が原因かもしれない』レビュー|夫の気持ちと妻の気持ち

 

『夫婦の危機は発達障害が原因かもしれない〜離婚を考える前に読むカップルセミナー入門〜 』のレビュー

 

書籍データ
タイトル:『夫婦の危機は発達障害が原因かもしれない〜離婚を考える前に読むカップルセミナー入門〜 』
著者:宮尾益知 滝口のぞみ
出版社:河出書房新社
発行年:2017年8月30日

 

アスペルガー症候群の旦那を持ち、
なんとか持ちこたえている奥さんに寄り添った本。

 

それが、夫婦の危機は発達障害が原因かもしれない、です。

 

子どもの発達障害の問題の本はたくさん出ていたり、
発達障害だと気がつかずに大人になった人向けの本もたくさん出ています。

 

ですが、発達障害のまわりで苦しむ人々がいるということは、
まだまだ知られていません。

 

むしろ、発達障害の方のせいで、まわりが迷惑するので、
何かあれば、「アスペだから、あいつ」「発達障害やろ、あいつ」という差別的な使われ方がするのだと思います。

 

発達障害というのは、その人本人だけではなく、
きちんとしたケアを行わないとまわりも疲弊していく。

 

その状況を丁寧に説明してくれる本です。

 

最近は、学校の先生なども、心を病まれて休職したり、退職されたりしています。

 

その原因が、モンスターペアレントと呼ばれる一部の、
親による、朝も夜もない、クレームだったりします。

 

 

星野仁彦先生は、
その著書で、発達障害の人はモンスターペアレントになりやすいと指摘していますが、
学校にクレームをつける人は、モンスターペアレントと呼ばれますが、
職場や学校の同級生によって、精神的な負担を背負わされる人は増えていて、それについての問題提起はまだまだ少ないです。

 

私が職場で担当していた生徒にも、
アスペルガー症候群と思われる同級生に殴られ、学校に行かなくなった生徒がいました。

 

すでに、受験も終わっていたので、
もう、学校に行かないでいいですよ、とこちらはアドバイスをさせていただきました。

 

私の生徒は、受験終了後、しばらくしてから、
そのアスペルガー症候群のA君に、なぜ、その学校を選んだのか?という質問を受けます。

 

特に、A君と親しい間柄でもないので、彼は、なぜ、答える必要があるのか?
と返します。ただ、あまりにしつこかったので、彼はA君を無視することにしました。

 

それでも、休み時間ごとに、しつように学校を選んだ理由を聞いてくるA君。

 

人との距離感をとるのも苦手なので、どんどん近づいてきて、
ついに、私の生徒は彼を、手で突き放します。

 

それに逆上したA君は、生徒に殴りかかってきたのです。

 

もちろん、学校では問題となり、
A君は今後、いかなる場合であっても、私の生徒の近くには来ないと、
親を交えて約束させられたそうです。

 

しかし、人間的に理解できない行動をとるA君が怖いと相談を受け、
私は、もう、高校への進学は決まっているから、卒業式も含めて怖いなら、中学校に行かなくていいとアドバイスをしました。

 

 

結果として、せっかくの卒業式を彼は、パスすることに決めました。

 

 

アスペルガー症候群の、もちろん、一部の偏った例ではあるんですが、
発達障害の人の、時に異常とも思える行動に、せっかくの思い出、せっかくのイベントなどを、
邪魔される人は実は多いんです。

 

学校であれば、アドバイスしてくれる人も、相談に乗ってくれる人も、
揉め事を止めてくれる大人もいます。

 

 

これが、夫婦だったら・・・・

 

 

私は発達障害の理解がもっと広がればいいと思っています。

 

それは、発達障害の人が健やかな未来を歩ける、という願いもありますし、
発達障害の人に、自分の人生をめちゃくちゃにされないように、ということでもあります。

 

地震や雷が天災であれば、
自分や子どもが発達障害だと思ってもおらず、まわりに迷惑をかける人たちは人災だと私は考えています。

 

 

冷たいことを言うようかもしれませんが、
このサイトに来ていただけている方であれば、大丈夫だと思うんです。

 

だけど、自分の無知によって、
迷惑をまわりにかける人は、やはり、人災です。

 

お子さんが発達障害にならないように、発達障害だと気がついても、
改善に向けて一歩が踏み出せるように、私はこのサイトを運営しています。

 

だから、このサイトに来てくれる人には、
正しい知識を身に着けてほしい。
いい本を紹介するのは、そのためなんですね。

 

 

この本は、発達障害の方と結婚をした方の苦労、
そして、その苦労の解決は、専門家に相談したからといって、すぐには解決しないという現実を教えてくれます。

 

でも、その一方で、
きちんと対応していけば、自分が発達障害、アスペルガー症候群だと思っていなかった夫が、
その事実を受け入れ、妻や子どものことを受け入れていく、という夫婦が多いことも教えてくれます。

 

 

この本は、カサンドラ症候群と呼ばれる、
夫の発達障害に苦しみ、それをまわりに打ち明けられず、
ひとり苦しみを抱えてしまっている方に、寄り添った本です。

 

その苦しみの深さ、つらさへの理解が丁寧に書かれています。

 

 

苦しかったね。
つらかったね。

 

簡単に、こうすれば、良くなるよ、なんてことは言えないけれど、
だけどね、こんな風に、乗り越えた人たちを私たちは知っているよ。

 

 

そう語りかけてくれる本です。

 

 

私がこの本を読んで、「おっ」と思ったのが、
カサンドラ症候群の当事者の方が、自分がカサンドラ症候群になっていると気づくきっかけです。

 

まわりになかなか理解者がいないと先ほど書きましたが、
ですが、少しずつ、発達障害については理解されているようで、
ふとしたきっかけで、誰かがその人に、「あなたはカサンドラ症候群かもしれない。あなたが苦しいのは、
あなたのせいではないんだよ。」と教えてくれる人がいた、ということです。

 

 

そういうケースが一人や二人ではない、とこの本では、書かれています。

 

 

著名な方々が、自分は発達障害だと声をあげてくれたり、
文章だけの本ではなく、コミックエッセイなどで、幅広い層へ届くようになったり、
全国で活動される様々な方々の声が、少しずつ広がっている。

 

 

そんなことも感じました。

 

 

もちろん、良いことばかりではありません。

 

 

発達障害の知識が広がれば広がるほど、
知識の格差もまた、生まれていきます。

 

 

知識もなく、自覚もなく、
ただ、まわりに迷惑をかける発達障害の方々は、
本人の気がつかないところで、差別され、区別され、見えない形で隔離されていくでしょう。

 

 

だけど、きちんと知識を得ようとすれば、前に進もうとすれば、
応えてくれる世の中になってきている、私はそんな「希望」をこの本から感じました。

 

 

基本的には、カサンドラ症候群など、
発達障害に関わる人たちの、苦労にスポットを当てた本です。

 

 

でも、随所に、発達障害に対する理解も増えつつあるという希望が見られる本でした。

 

 

では、3つのこの本のポイントを書いていきます。

 

 

1、カサンドラ症候群

 

発達障害の問題は、当事者だけではない。
そのまわりの心にも、深く影響を与える。

 

この事実と向き合った本です。

 

ストレスに対する人間の反応などを丁寧に解説しながら、
カサンドラ症候群のストレスレベルがいかに高いか、ということを、
丁寧に説明してくれています。

 

社会から孤立しやすい結婚後の女性への理解のために、
私達が知るべきことだと思います。

 

また、これから、結婚される方、結婚を将来的に考えている方のための、
知識として知っておくべきことだと思います。

 

2、専門家

 

この『夫婦の危機は発達障害が原因かもしれない』は、
宮尾益知先生と、滝口のぞみ先生によって書かれています。

 

だから、具体的で、夫婦がすれ違う場面がとてもわかりやすいのです。
そして、冷静な分析が加えられているので、この人たちなら解決策をくれるだろうと、
安心して読めます。

 

私が印象的だったのが、「そば」の話しです。

 

夫がざるそばが食べたい、と言ったとします。
それを聞いて、奥さんは、ざるそばを用意します。

 

ですが、そのそばには、海苔(のり)が乗っていなかったのです。

 

これは、「ざるそば」じゃない!と夫は怒りだし、
そのことに、妻もキレます。

 

アスペルガー症候群をはじめ、ASDの人は、依存性が高いんです。
だから、自分が言ったことは、「やってくれる」「理解してくれる」と驚くほどポジティブなんですが、
まわりへの理解はほとんどありませんし、謝るのも、お礼を言うのも苦手です。

 

これも、夫にとっては、ただのそば、文中では「盛りそば」としていますが、
夫の思う「ざるそば」ではないことに夫は怒り出すのです。

 

社会的にそれなりに成功している男の人であれば、
自分の思ったように会社ではなるので、なおさら、怒りがおさえられないでしょう。

 

でも、奥さんからすれば、「怒る前に、海苔くらいかけろよ」ということになります。

 

こういう1つ1つのことが、丁寧に分析され、
普通なら、どっちもどっちでしょ、なんて流される行為であっても、
その1つ1つにすれ違ってしまう原因があることがわかります。

 

この本では、カサンドラ症候群の解決は、夫婦だけでは難しく、
第三者が介入するほうが良いとしています。

 

 

この「そば」の件であれば、他人に言ってもらえば、お互いの気持ちのすれ違いが、すんなり入ってくるかもしれませんね。

 

こういう何気ない1つ1つの、夫婦で起こりそうなことがら。

 

それを解説してもらうことで、夫婦で、パートナーに発達障害があるとはどういうことか。
ということがわかります。

 

3、視点を変えること。

 

この本の最後に、リフレーミングという方法が書かれています。

 

視点をずらして、夫婦の行動を見てみる、という方法です。

 

この記事を書いているのが、2018年の3月11日なんですが、
3月11日は、東日本大震災があった日です。

 

その時、ほとんどの日本人が、苦しい人たちがいるからと、
贅沢品を買うのを控えようとしました。

 

だけど、堀江貴文さんなど、一部の方は、
復興には時間がかかるのだから、影響がなかった人は、できるだけ普通の生活をして、
日本の経済をまわすべきだ、という考えを示しました。

 

実際、まだまだ、復興は道の途中で、
ヤフーなどでも、検索することで1人10円の募金ができる、といった活動をしています。

 

あの時の識者の方々の意見は、正しかったのだと思います。

 

そういう見方をどうすればできるのか?

 

訓練もあると思いますが、学んで知識を増やすことなんですよね、やっぱり。

 

実際に、私も発達障害というのは脳機能障害で、改善など不可能なもの、と思っていました。
ですが、勉強を重ねるうちに、それは、思いこみで、
世の中には、たくさんの治療方法、改善方法があることを知り、実際に良くなった事例は、
きちんと、本などに書かれていることを知ります。

 

私の中で、発達障害で困っている人は、
知識さえ持てば、発達障害が改善できる可能性がある人、という見方に変わりました。

 

 

最後にさらりと書いてありますが、この視点を変える大切さは、
発達障害と向き合ったり、発達障害の人と向き合うにはとても大切なことです。

 

そして、大事なことなんですが、
この本にも書かれています。

 

視点を変えたものの見方が、「正しいかどうか」は重要ではないんです。

 

見方を変化させる、ということが重要なんです。

 

本文にこうあります。
「新たな視点を持ち、家族や夫を見直してみる。多くのコミュニケーションを1つひとつ見直していく。ふたりの課題を克服しカップルの良好な関係を築くため、夫の特性を知り、夫にも理解と協力をしてもらうことで可能性はおおいにひらけるのです。」と。

 

固定された見方、考え方が、すれ違いを生みます。

 

理解をしましょう、と言葉だけ言っても、どうすればいいかわからりませんよね。

 

視点をずらす。視点を変える。

 

見えている世界の角度を変える。理解するという一歩は、
自分の世界の見え方を意識して、それを変える、ということなんですね。

 

 

自分の発達障害も、相手の発達障害も、子どもの発達障害も、
実はすべて、この視点を変えてみる、ということで、不安は希望へと変わっていきます。

 

ぜひ、最後まで、この本を読んでください。

 

 

デメリットは??

 

この本のデメリットは、
文字ばかり、ということでしょうか?

 

 

丁寧な言葉で書かれてはいるものの、
イラストや表などはあまりなく、字ばっかりというのは、
もしかしたら、敬遠される方もいるかもしれません。

 

でも、それだけ、きっちり伝えたいことを伝えきろうとしているということです。

 

無駄な1文はありません。

 

すべて、あなたの知識・力になるものです。

 

ぜひ、手に取って読んでほしいですね。

 

 

買ってよかった?

 

サブタイトルにもありますが、これは、
「離婚を考える前に読むカップルセミナー入門」なのです。

 

 

そう、セミナーなんです。

 

 

セミナーというのは、
課題の解決策まできちんと教えてくれるもの、です。

 

なぜ、そういったことが起こるのか?

 

そういったことが起これば、どんな問題が出るのか?

 

その問題が出た後、どうやって解決していくのが良いのか?

 

これを順番に解説してくれるのがこの本です。

 

なぜ、カサンドラ症候群によって女性が悩むケースが多いのか?

 

カサンドラ症候群によって、出てくる問題とは何か?

 

カサンドラ症候群の症状が見られる夫婦はどうやってその問題を解決していけばいいのか?

 

1つひとつ丁寧に、
具体例とともに、そのことが書かれていきます。

 

 

これは、知識を得るためだけの本ではなく、
2人の専門家のセミナーを体験できる本なのです。

 

たかが、本だとは思わないでください。

 

この本は、問題の解決まで導いてくれる、優しくて熱い本なんです。

 

 

夫婦の危機は発達障害が原因かもしれない 離婚を考える前に読むカップルセミナー入門 [ 宮尾 益知 ]

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