発達障害が治るって何か?その2
脳は変形するっていう話です。
発達障害が治る!っていうと、
絶対に言われるわけです。
証拠出せ!って。
で、その証拠の1つが脳が変形するっていう話です。
安くて、読みやすい本なら、
友田明美先生の本でしょうか?
私のレビューページへ飛びますので、
興味がある方は、ご覧ください。
子どもの脳をMRIで追跡調査して、
子どもの脳が変形していく様子を研究した本です。
親の教育の仕方、子どもへの声かけによって、
子どもの脳が変形するよっていう話がこの本には紹介されています。
それは、言葉もそうですが、
イライラした態度、などでも、子どもは意識、無意識にそれを感じ取り、
脳を変形させる、という事実が紹介されています。
もう少し詳しく書くと、
適切な言葉がけがされなければ、脳が変形するどころか、
本来成長しなければならない部分が成長を止める、ということも書かれています。
私たちは自動的に勝手に脳というのは成長すると思っていますよね。
だけど、親の言葉、この目には見えないもの、そして、言葉すら発しない態度ですらも、
子どもの脳は変形したり、成長を止めたりするんです。
不適切な親の養育が子どもの脳を変形させるだけではなく、
場合によっては、成長も止めてしまう。
そんなショッキングな内容となっています。
これだけ書くと怖いんですが、
こういう話も載っています。
きちんと、脳の仕組みを理解し、適切な行動をとれば、
脳の容積が増えた、しかも、20歳を超えていてもなお、という内容も載っています。
要は、ちゃんと勉強して、ちゃんと実践したら、
20歳超えていても、脳は成長するよっていう話です。
これは、澤口俊之先生が、
年齢が低いほうが、発達障害の改善は早くみられるが、
何歳からでも改善可能だ!って言っているのと重なりますね。
澤口俊之先生の、
「発達障害の改善と予防」っていうタイトルのまんまの本も、私はレビューしています。
発達障害は絶対治らない!っていう人は、
澤口俊之先生のこの本くらい、せめて読んでほしいです。
『モテたい脳、モテない脳』という本もあわせて読んでほしいです。
澤口俊之先生は、阿川佐和子さんとの対談という形式で出しているんですが、この本の内容もおもしろいんです。
2003年に出て、今は文庫で出ている本ですが、
このころにすでに、発達障害の増加は、遺伝要因だけではなく、生活習慣・生活環境が要因だと、
澤口俊之先生は指摘しています。
ということは、逆にいえば、澤口俊之先生って、
2000年ころくらいから、ちゃんとした生活習慣と生活環境を整えれば、
発達障害は治るって考えていたんだということがわかります。
「治る」っていう言葉を使うかどうかは別にして、ですが。
もう、平成が終わろうっていうのに、
発達障害は治らないものという変な常識がいまだにあります。
脳が簡単に悪い方向へ変形するなら、
いい方向へも変形する。
これって、普通のことですし、
すでに、MRIという画像診断でも動かぬ証拠が出ている。
他にも、澤口俊之先生のことを紹介したことには理由があります。
もちろん、この先生がすごい!っていうこともありますが、
この先生の話す「人間の進化」の歴史が面白いんですよ。
澤口俊之先生のオリジナルではないんですが、
人間の進化っていうのは、ネオテニーという説があるそうです。
ネオテニーとは、ウィキペディアにはこうあります。
『動物において、性的に完全に成熟した個体でありながら非生殖器官に未成熟な、つまり幼生や幼体の性質が残る現象のこと。』
つまり、人間も体としては、子どもを生めるようになるが一定の大人のラインといえる年齢があります。
しかし、
脳の成熟は遅く、何歳からでも、新しいことを始めようと思えば始められる、という性質を持っています。
他の哺乳類の多くは、体が成熟すると、
あわせて行動も同じパターンになります。
子を産み、育て、また、子を産み、育てる。
です。
しかし、人間は違います。
何歳からでも生き方を変えることができます。
これが人の進化がネオテニーといわれる部分です。
要するに、言葉1つで良くない脳の変化が起きるのであれば、
きちんとした環境をあたえれば、脳は良い方向に変形してくれる、ということです。
NHKの番組でも、脳は90歳を超えてもなお成長する、
というようなことが科学者によって語られています。
そして、その実例は、MRIをつかって、実証されているわけです。
一部の発達障害を誤解している人だけが、
発達障害は治らねーよ!と言っているだけで、
きちんと脳を研究している人は、「治る」または、いろいろ配慮して言葉としては「改善する」と言っています。
これを発見した時、私は震えました。
自分の脳が良くない方向にすぐに変形する怖さもありますが、
同時に、いつからでもやり直せる、という言葉は、
人間にはぴったり当てはまる言葉だということもわかったんです。
このその2を書いていたのは、2018年の8月です。
そして、2018年の12月に、こんな内容の番組もNHKで公開されました。
脳を縦断で撃たれて、言葉を失ってしまった女性が、
音楽療法によって、言葉を話せるようになったというものです。
つまり、言葉を話すというような機能ですら、
銃弾によって失われても、他の部位がそのかわりをはたすんです。
脳の力強さを感じませんか?
環境が大きく変わっても生き残れるように、
いつまでもやわらかい脳になった。
だから、いつからでも、進化できる、私たち自身が。
私はそんな可能性を人間自身に感じます。
そしてそれは、、やわらかいからこそ、
不適切な環境におかれれば、良くない方向に変形してしまう危険性もあるとなるわけです。
ちなみに、頭がやわらかいというのは、
人間にとって、良い進化をしているということです。
日本語で、頭が固いっていうと、マイナスな言葉ですよね。
そう、頭が固いっていうのは、マイナスなんです。
逆に、やわらかい脳というのは、人としていい脳力を持っている、ということです。
発達障害は武器だ!とか、
発達障害の人は、すぐれている何かを持っている、
というのは、ある程度正しいんです。
だって、やわらかい脳を持っているということは、
すごく得意になれる分野を持つように脳が変形する可能性があるからです。
でも、それも、いい環境を与えられたら、になりますが。
とにかく、私が発達障害って治るんだなぁって思い始めたのが、
この人間の脳の進化の歴史や特性、そして、MRIを使った実証・実験によって、なんです。
それから、こういう本も読みました。
です。
本を買う時間がないっていう人は、私のレビューを読んでください。
そこに書かれているのは、
きちんと訓練すれば、脳はきちんとその回路を作るっていう話です。
人間がおこなうAという作業があったとして、
本来は脳のXという場所がその働きをおこなうとします。
そのXという場所が、先天的に弱い人っていうのがいます。
こういう人たちを発達障害とよんでいると考えられているわけですが、
きちんと訓練すれば、脳のある部分Yという場所が活性化して、
そこに、Aを行う回路が別にできる、という報告があります。
脳はやわらかく、後からでも、変形させられるというのに加えて、
本来決められている場所と違う場所に、回路ができるということ。
それが、2011年には、指摘されているんですね。
ただし、Xという場所にできるべき回路と、まったくおなじ回路がYにできるわけではなく、
結果として、Aという作業ができるような回路になる、ということでした。
ただ、これって、別に特別なことじゃないんですよね。
8+6=14
っていう問題があると思います。
これって、頭の中で、
8を(5と3)に分けて、6を(5と1)にわけて、10と4で、14とやる人もいれば、
8に6から、2をわけて、10にして、6の残りは4だから、14って考える人がいたりします。
暗算で14ってこたえがどの子どもから出てきても、
頭の中での計算の仕方は、じつは、子どもによって違います。
小さなこと、身近なこと、みんなが自然にやっていることでも、
頭の中での処理の仕方は、意外にみんな違うんです。
よくツイッターなんかで、発達障害の人が傷つく言葉として、
「え〜、発達障害っていっても、普通にできてるじゃん」という言葉が取り上げられています。
その普通のために、こっちは相当がんばってるんだよ!
と、一般の人のそういう言葉に腹が立つと、発達障害を持っている方が、ツイートしています。
だけど、どんな人も、じつは隠れて努力をしている可能性があるんです。
それを、努力と認識するかどうかの違いがあるだけで、
表面上は、結果としてできていることも、
頭の中では、それぞれ違う回路がはたらいている。
これって、普通のことなんですよね。
結局、私が勉強してわかったのは、当たり前のことだったんです。
脳が変形するという話も、
MRIで、実際の脳の画像診断を見るからこそ、怖い!って思うんですよね。
昔から、子どもが急に性格が変わったように見えたりすることはあります。
周りの友人関係とかの影響で、脳が変形した結果で、それ自体は昔からよくあったことです。
さきほどの、8+6、みたいな問題も、
答えは、一緒になっても、やり方はじつはそれぞれ違うっていうのも、
これも、いちいち意識しないだけで、普通のことです。
発達障害の改善方法、治す方法を探していると、
結局、人間ってなんだっていうところに行きつきます。
われわれの脳はどう進化し、どう成長し、どう変化するのか。
それを私たちはどういうとらえ方をしているのか。
それを知っていくことだと気がつくようになりました。
というわけで、脳は良くも悪くも常に変形してしまう。
怖いけれど、勉強し、学び、知識を身に着け、実践すると、
思う方向に、良い方向に変形させられる、ということもわかりました。
いつからでも、良い方向に脳は変えられます。
でも、それは、言い換えれば、いつからでも悪くなるということでもあります。
だから、私たち大人は、子どものために学び続けないといけない。
私はそう考えています。
さて、次回は、
発達障害だから良かったっていう人と、
発達障害だから苦労したという人の違いを見ていきたいと思います。