『NEURO〜神経発達障害という突破口〜』のレビュー
『NEURO〜神経発達障害という突破口〜』のレビュー
この本は花風社の浅見さんが書かれたもので、
専門的な内容ながら非常に読みやすい1冊になっています。
書籍について
タイトル:NEURO(ニューロ)〜神経発達障害という突破口〜
著者:浅見淳子
出版社:花風社
発行年:2019年3月22日
まずは、あとがきから読んでほしいなと思います。
あとがきの一部を引用させていただきます。
『だからいつかは判断基準が変わるかもしれないのは承知の上で、今現在の情報を伝え、考えを書いて、世に問う次第である。』
実際にはあとがきに代えての付記の後半にある1文です。
ここで著者の方がどれほどの想いを込めてこれを書かれたのかがわかります。
この本の当時のレビューはアメブロに記してあります。
競馬に例えている過去の私(笑)
その時と変わった思いもあるので、
改めてサイトの掲載にあたって感想を書こうと思います。
どこかの記事で読んだのですが、
浅見さんはこの本を短期間で書き上げたそうです。
どおりで読みやすいなと思いました。
本って編集を重ねれば重ねるほど、日本語としては正しくなっていくそうですが、
どんどん無機質でなんとなく読みにくいものになっていくそうです。
私は過去、書店で勤務していた経験があり、
編集者の方がそのようなことを話されていました。
普通の人は時間をかけて書かれた本のほうが上だと思うけれど、
著者の方が一気に書き上げたほうがその熱が文章にのって読むほうも読みやすいのだそうです。
まさに、そんな本でした。
でも、細部までわかりやすいので、それは実力がないとできないことだと思います。
私がこの本を読んで思ったことは1つだけです。
この本が出る前に、この本の内容を書くべき人がほかにもたくさんいたんじゃないか?
ということです。
私はこの『NEURO』を読んだあと、DSM−Wの製作委員長であるアレン・フランセスさんの『正常を救え』という本を読みました。
この2冊を読むと、
日本の発達障害を含めた精神医療がどれだけ遅れているかがわかります。
遅れているという表現はふさわしくないと思います。
本来、精神医療にかかわる人が個人の思いはいろいろあるにしても読むべきDSM(世界基準の診断マニュアルであり、日本では基本的にこれが基準になるそうです。)をほとんど読んでいない。
アレン・フランセスさんの『正常を救え』での警告は、
DSMは大事だけれど、それだけを信じてしまって、目の前の患者をきちんと見るという【当たり前】を失わないようにしよう。
というものですが、
日本ではそもそもまず読むべきものすら読んでいない人たちが行う医療を【標準医療】とか呼んでいるということです。
つまり、【標準医療】のレベルに達していないわけです。
そのことはさらに詳しく本書に指摘してありますが。
アレン・フランセスさんの『正常を救え』は、DSM−5にも欠点はあるから、
それを意識したうえで、患者一人一人見るという当たり前の医療をしようね、ということです。
決して、診断基準を無視して好き勝手にしていいという話ではありません。
しかし、日本ではそもそもその診断基準となるべきものを読んでいない。
これは、浅見さんも指摘していますし、溝口徹先生も同じ指摘をしています。
これが日本の精神医療であり、現実なんです。
発達障害が治るのか治らないのか以前の問題です。
そして、当たり前ですが、DSMすら読まないのですから、
世界各地で行われている発達障害の研究についてもほとんど知らない専門家が多いです。
そんな専門家の言うことは信じなくていいというか、信用できませんよね?
私だって、医者にかかります。
その時に、目の前の医師は【標準医療】に従って薬を処方してくれたりしていると思います。
でも、その【標準医療】そのものがテキトーなのだとしたら??
発達障害を含めた精神医療に関しては、日本では私たち自身が学び続けることが絶対に必要だと思います。
悲しいことではありますが・・・・
DSMを当然読んでいることが前提のアメリカであっても、
アレン・フランセスさんは【患者自身がセカンドオピニオンになれ(つまり、勉強しなさい)】と著書で書いています。
日本ではDSMすら読んでくれていないので、セカンドオピニオンどころか、ファーストオピニオンを目指すべきです。
その現実に気づかせてくれる大切な本です。
この本の特徴を3つにまとめました。
1、読みやすい
著者の思いとともに、内容がすっと入ってくる本です。
こういう本は最初から最後まで読むのがおすすめです。
著者の思いをのせて、内容をつかんでいくと、深く理解できると思います。
2、治らないのか?
発達障害というのは先天的なもので治らないものなのか?
日本でもいろいろ議論があるところですが、
DSM自体はどう言っているのか?
わかりやすくまとめてありますので、
そこだけを読んでもこの本のもとは取れると思います。
3、NEURO
まさに、これなんです。
発達障害が治るのか?治らないのか?
それは「脳」だけに問題をもとめても答えはでてきません。
「神経」にこそ、その答えがあるんです。
そして、神経は脳の中にもありますが、全身つながっているものです。
著者は発達障害の一面を身体障害とも考えているそうです。
そして、そう捉えることが解決の糸口となります。
人間の「神経」。そして、身体全体のことと心。
そこをもう一度、問い直す一冊です。
デメリットはある??
自分でエビデンスを探せないのに、
「エビデンス」が口癖の人は読まないでいいと思います。
買ってよかった??
2019年は発達障害について1つの転換期になるのかなと思います。
どう変わっていくのかがわかる1冊です。
日本は世界に比べると遅れているのかもしれませんが、
流れが変わる可能性を感じることができる1冊です。
こういう思いで、発達障害と向き合ってくれている方がいると思うと、ひとりで世間の常識と戦っている親御さんは頼もしく感じられるのではないでしょうか?
2019年に出版されて本当に良かったと思える1冊です。