『活かそう!発達障害脳』のレビュー|発達障害が治るということがわかる本
『活かそう!発達障害脳』のレビュー|発達障害が治るということがわかる本
発達障害が治るというのはどういうことかが、
実証的研究でわかるようになっています。
何度も読んでボロボロになってしまった本。
私が、発達障害が治ると言い切るのはこの本に出会ったことも大きいです。
タイトル:活かそう!発達障害脳〜「いいところを伸ばす」は治療です。
著者:長沼睦雄
出版社:花風社
発行年:2011年6月26日
発達障害とは何か。
発達障害が見られる場合、脳に何が起こっているのか。
ADHD、アスペルガー症候群といっても、
なぜ、ひとりひとりが違うのか。
この発達障害の症状1つ1つの違いが、脳の活発な部分と不活発な部分によって、
そういう症状が出てくる、というのが非常に丁寧に解説されています。
さらに、そのうえで、発達障害の治療、治るというのはどういうことか?
これも、丁寧に解説されています。
長沼先生は、表紙では精神科医となっています。
しかし、読んでいくと、精神科医の先生よりも、
非常に柔軟で、多角的な視点から発達障害を捉えていると感じました。
そこで、長沼睦雄先生の略歴を確認しました。
すると、
脳外科研修を経て、神経内科を専攻し日本神経学会認定医の資格を取得。
北大大学院にて生化学の基礎研究を終了しから、道立札幌療育センターで13年、小児科精神科医として勤務されたそうです。
実際にはお会いしていないので、
推測になりますが、もともとは、脳の研究を専門にされていて、
その知識が基盤となり、医師としての勤務は、小児科の精神科医として、実践を積まれた。
だから、脳の発達や脳の機能、そういったものに精通していて、
脳を育てる、脳を鍛える、という点からのアプローチというのが可能になったのだと思います。
柔らかな言葉と説得力のある現場での経験からくる言葉。
非常に励まされますし、
発達障害って、そうだったんだ、と納得できる1冊です。
ただ、中身が濃い分、読むのがしんどい部分はあります。
しんどいんですが、変に編集で読みやすくしたり、中身をカットしたり、
そういうことがないのがいいんです。
読みにくくても、漢字ばかりでも、
長沼先生の言葉、そして、聞き手である浅見淳子さんとのやり取りは、
カットしてはいけません。
このやりとり1つ1つに、私やあなたが知らなかったことが絶対あるからです。
大手出版社の本は、
どうしても、「売れる」ために編集が入ります。
もっと、突っ込んだことを書きたいだろうに、
どうしても、水面のほんと表面だけをサーっと書いた本も多いです。
これはこれで、仕方ないですし、大手の出版社が出すことで、
たくさんの人が手に取ってくれるかもしれない。
そういう思いで、いくつもの発達障害の本を出す先生方もいらっしゃると思います。
それはそれで、1つの正しい活動だと思います。
ただ、読みやすいように編集をされた売れている本というのは、
それが権威のある先生であればあるほど、「それがすべて」と受け取られてしまう面があると思います。
例えば、発達障害のある子のいいところを伸ばそう、という言葉があったとします。
ほとんどの本はそれで終わります。
でも、この本は違うんですよ。
浅見さんは、いいところを伸ばしましょう、という長沼先生にずばり切り込みます。
ちなみに、長沼先生は、「いいところを伸ばす」ではなく、「いいところを活かす」とおっしゃっています。
この違いにも注目して、84ページ以降は読んでくださいね。
少し、引用させていただきます。
浅見さんの言葉
「いいところを活かしましょう」ってよく特別支援教育に熱心な先生とかおっしゃいますが、それがイコール「苦手なことはやらなくていい」というスローガンっぽく感じてしまって、すんなりとは賛同できないところがあるんです、正直言って。だって、苦手なことを完全にやらなくていい人生はないと思うし。
ズドン、っとまっすぐな言葉ですよね。
これ、アズ直子さんも似たことをその著書でおっしゃっています。
私の本に発達障害の人でもできる簡単な成功法則を求めるな。
それなりの努力の上に、成功はある。
というような内容です。
- 発達障害は誰のせいでもない。
- 発達障害はしょうがない。
- 発達障害だからできないことはある。
発達障害について書いてある本で、売れている本ってそういうこと言うんですよね。
でも、発達障害と診断されながらも、成功(人によって定義はいろいろだとおもいますが)している人は、
やっぱり、努力しているんですよね。
また、発達障害だからできない、ではなく、
発達障害でもできる、になろうとしている人たちもたくさんいます。
Twitterをはじめて、感じたことは、
どうも、両極端というか、できないのだから理解して!という人と、
できるようになるように選ぶのは自分!と言い切る人、2通りがあるなと思います。
発達障害があろうがなかろうが、そこに頼らず、言い訳をせず、
努力している人たちがたくさんいるんですよね。
それが、浅見さんのこの反応を引き出していると思います。
そして、長沼先生のこの「いいところを活かしましょう」というのは、
世間的に理解してほしいスローガンではないと言い切ります。
この言葉の本当の意味は・・・・
長いので、少しずつ引用します。
苦手を頑張れるエネルギーは得意を徹底的に頑張って脳を元気にさせた結果得られるものだと思います。
元々、読むときに使う脳の働きが弱い子たちが、早期に弱いところを高める専門的な訓練を行うことにより、弱かった基礎的な働きを強くすることができるそうです。幼児期に読み障がいが目立っていても、努力や工夫をすればやがてある程度読んだりできるようになります。ただ、それで普通の人と同じ程度になったかというとそうではないのですよね。また、本来働く場所以外に、本来は読みに使うような場所ではない場所も機能するようになるんです。別の脳の回路が育つんです。
実際に、そういう研究があり、わかっているそうです。
まん丸のボールのような整った脳機能を持っている人はいないのではないでしょうか。浅見さんも僕も例外ではありません。でも弱みの陰には必ず強い部分があって、健康な人というのは自然にそこを活かして弱い部分を補って生活しているものなのです。
漢字が多くて、わかりづらいかもしれませんし、
その場その場の話ことばなので、論が整理されていないところもあるので、
私なりにまとめました。
つまり、
脳を元気にすることで、(脳を鍛えるともいえます)、脳の別の場所を活性化させることで、脳に新しい回路ができ、
ある程度の苦手も克服できるようになる、ということが示されているんですね。
発達障害を治す、というのは、普通の人と同じになる、ということではなくて、
その人の生命力を引き出して、強みによって弱い部分を上手く補えるようになりましょう、ということだと言えます。
私がこのサイトでずっと、上手く言えないでいたことを、
2011年の時点で、こんなにも上手く言葉にしている先生がいて、嫉妬します。
私が、食にこだわって、
このサイトを作り続けているのも、
このように、実際に読んで素晴らしい本をたくさんレビューしていくのも、
これを目指すため、です。
得意を伸ばして、脳を元気にするといっても、
得意がわからなかったり、長沼先生のような良い精神科医に出会えるかはわかりません。
でも、食を改善し、体と脳が元気になる食事は知識さえあれば誰でも実践できます。
また、そういった実践を支える知識も、お金を払えば、誰でも手に入れることができます。
ポイントは、「やろうと思えば、誰でも可能」というところです。
私はそれを伝えていきたいんですね。
話がそれてしまいましたが、
脳という視点から、発達障害を治す、というのはどういうことか、
それが非常にわかりやすく、納得のいく形で説明されているのが、この本なんです。
専門家でも発達障害は治らないとする人たちが大勢いる中で、
また、私がこういう活動をする中で、日本は海外に比べて無農薬野菜の規制が〜、
とかいろいろ言う人がいるんですが、
脳を元気にして、脳がなかなか動けないところではなく、他のところで新しい回路を作り、
不便なく生きられるようになる。
「普通の人」になるのではなく、
「普通に生活していける人」さらには、その上を目指していける理由。
それがここにあると思っています。
これぞ、まさに、発達障害の教科書、ですよ。
発達障害を理解するにあたって、まずは手に入れてほしい本です。
では、この本の3つの特徴をあげていきます。
1、濃い
いわゆる「優しい」本ではありません。
読みやすく行間があったり、
文字が多かったり、
アンダーラインがあったり、
そんなものはありませんが、
おそらく発達障害で知りたいであろうことがここに詰まっています。
発達障害とは脳機能障害なのだけれど、
それはどういうことなのか。
脳機能障害だけれど、「治る」「治療する」とはどういうことなのか。
人間の脳の持つ不思議でもあり、力強い部分とは?
ということを、丁寧に解説してくれる本です。
聞き手のこの本を出版されている社長の浅見さんが、
パワフルなところも私は好きです。
とにかく、伝えられることは全部伝えるっていう姿勢がいいですね。
2、知識
自分の感覚とか、
こうしようという発想は、「知識」からできることです。
知識というのは、経験で得られるものもありますが、
意識して、得られるもののほうが多いわけです。
この本でも、知識があるからこそ、「できる」ようになることが多いと指摘しています。
例えば、子どものいいところを探しましょう。
とアドバイスを受けたとします。
この言葉だけで、子どものいいところを見つけられる親もいれば、
何が子どものいいところなのかさえ、わからない親がいるわけです。
で、その親の差って、親の脳力や能力の差ではなくて、
「知識」として子どもの良さって何かを知っているか、なんですね。
勉強ができる。
走りが速い。
っていう目に見えるものから、
優しい。
人の悪口を言わない。
発想が面白い。
といった、こちらが意識しないと見落としてしまうことまで。
これも、「良さ」なんだと知っているかどうか。
発達障害のお子さんをなんとかするなら、まずは、そのお父さんとお母さんから。
発達障害の専門家の方はだいたいそういいます。
まず、お父さん、お母さんから、発達障害に対する知識を得てもらう。
そうすることで、子どもの見え方が変わりますから、
接し方も変えられる、ということなんですね。
でも、「知識」を与えるところから治療は始まっていきます。
脳に関する知識もそうです。
知っているからこそ、「できる」ことが増えるんですね。
この「知識」をたっぷり得られる本です。
3、「知識」をどう使うか?
発達障害のお子さんを持った場合、
私は絶対に必要なことがあると思っています。
それが、「知識」を得るために勉強をする、ってことです。
例えば、アスペルガー症候群のお子さんは自分の怒りであったり、感情をコントロールするのが難しいです。
いつまでも、昔のことを覚えていて、思い出しては、怒り、それを他人にぶつける。
ということをしてしまうお子さんもいます。
そういうお子さんに対して、
長沼睦雄先生は、4つの解決策を提示して、自分ができそうなものを選ばせるそうです。
発達障害のお子さんだけに限らず、
子育てが上手くいっている家族のケースって、
たまたまそのお父さん、お母さんのやり方と子どもの感性がマッチしていた。
か
お父さん、お母さんが勉強して、その子にあった子育ての方法でアプローチできた。
この2種類なんです。
上手くいっている家庭って、たまたま、なことも多いわけです。
だから、子育てが上手くいかなかったり、
発達障害のお子さんを上手く扱えないのは、あなたの能力の問題ではなく、
「知識」がないだけなんだと思ってください。
「知識」を得るのが第一段階、
そして、その「知識」をどう使うかが第二段階だと思っています。
長沼睦雄先生は、現場にいる先生でもありますから、
先生が持っている「知識」をどう使うか、も、丁寧に説明してくれます。
「知識」を与えてくれる本はたくさんありますが、
この「知識」をどう使うか、これに関しては、触れられていない本もたくさんあります。
長沼睦雄先生の実践例が、「知識」をどう使うかの見本だと思います。
浴びるほど「知識」を吸収して、
そして、発達障害のお子さんに選ばせてあげる、
こういった方法があるのだ、ということを教えてくれるんですね。
デメリットは??
私は、ほんと、偶然、本屋にあったんですが、
けっこう手に入れられないかもしれません。
今は、通販などで、買えますので、
そういう入手しかできないというのは、少しデメリットかもしれません。
買って良かった?
良すぎて、レビューが遅れたほどです。
発達障害のお子さんの脳に何が起こっているか、
治療するとはどういうことか。
先天的に、もしくは、途中で脳に傷を受けたとしても、
脳には可能性があり、力強さがあり、生命力があって、
新しい回路は作れるんだ、ということ。
でも、そのためには、脳を元気にしないといけないんだということ。
1つ1つがつながっていて、
そして、1つ1つがわかりやすく説明されています。
「知識」がなぜ重要か。
そして、「知識」を得て使うということはどういうことか。
学ぶことの意味と、
その学びをどう先生は活かしているか、
これも、知ることができる本です。
食事のことは触れられていませんが、
私はこの本を読み、やっぱり、発達障害はなんとかできる!と改めて励まされました。
何歳になっても人間の脳は成長する!
と言われるよりも、
この本のように、
脳の「そのことを処理するために普通は使われるところではない」ところに、
新しい回路ができて、できないことができるようになる、という説明と、
すでにそれは解明されている、というところは、大丈夫!っていう、陳腐な言葉より、
「大丈夫なんだ!」と思わせてくれます。
2015年の7月23日には、第5刷になっているので、
重版が重ねられているのがわかります。
手に取った人だとわかりますが、発達障害について知りたいこと、本当の「知識」が詰まった本です。
発達障害で困っているなら、絶対に手に入れてほしい本ですね。