『モテたい脳、モテない脳』レビュー【発達障害の本当のこと】
『モテたい脳、モテない脳』レビュー
書籍データ
タイトル:モテたい脳、モテない脳
著者:澤口俊之 阿川佐和子
出版社:KKベストセラーズ
発行年:2003年5月14日
発達障害は、脳機能障害だ!
と声高に言って、「治らないんだから、理解して!」という内容の文章を、
ツイッターのツイートで見たことがあります。
発達障害は、脳の機能障害、これに対して私も反論はありません。
だけど、
発達障害について、どれだけの人が学ぼうとしているのか、
これには疑問が残ります。
発達障害は脳機能障害だ!と言うのに、
発達障害について本を書くのは、精神科、心療内科の先生がほとんどです。
これについて、皆さんは、疑問に思ったことがありませんか?
脳の機能障害なのだから、
どうして、脳の科学者が、発達障害についての本を書かないのか、と。
澤口俊之先生は、ご自身のブログで、
発達障害は治ると公言していますし、そのための『発達障害の改善と予防』というまんまのタイトルの本を出しています。
私のサイトでも、レビューさせていただきました。
ですが、この本、難しくて読みにくいんですよね(苦笑)
ある程度、発達障害についての知識がないと、読み進めていけないと思います。
おそらく、澤口俊之先生が賢すぎて、
読むほうは大変・・・・ということなんだと思います。
本当にいい本なんですが、澤口俊之先生の熱い思いが、
前のめりに出てしまって、肝心の大事なところが入ってこない。
その点、脳のこと、脳を中心とした人間の進化のこと、
発達障害が増えてしまった理由、など、脳のことがすっきりわかるのがこの本です。
阿川佐和子さんとの対談によって、
澤口俊之先生の伝えたいことがすっとわかる内容になっています。
私が面白いな、と思ったのが、
人間の進化の過程です。
人間は、子どものまま大人になるって知っていましたか?
私は知りませんでした。
確かに、自分も含めて、
20歳、25歳、30歳、35歳、実際はもっと大人だと思っていたのに、
20歳なんてガキだし、35歳になっても、まだまだ子どもだなぁと思います。
それは、精神的に未熟という要素もあると思いますが、
もともと、そうやって人間は進化してきたようなんです。
大人になる強み、というのは、完成された行動を繰り返す強さ、と言えます。
それに対して、子どもの強さ、というのは、変化に対応できる、という点です。
それを、ネオテニーと言うそうです。
大人になるのをやめながら、家族を持って、子どもを持つ。
それがネオテニー。
P35ページの阿川さんの言葉がわかりやすいので引用します。
「環境に対して順応性を高めるために、頭の固いオヤジにならないで、素直な子どものままでいようという戦略を選んだんでしょうか。」
澤口俊之先生の答えは、yes、です。
発達障害の人、発達障害の症状がきつい子が、
幼児性を引きずるのは、人類の進化の過程を見れば、当然のことだったんですね。
そもそも、人間は子どもであろうとしているわけですから、
脳の発達が未熟なままだと、本当に子ども子どもしてしまうわけです。
赤ちゃんはかわいいですが、
みんながみんな赤ちゃんのままでは、困ってしまうわけです。
脳の柔軟性を保ちながら、成長をしなければならない。
人間とは、その困難な道を選んで進化を遂げた生き物なんですね。
だから、人間の成長について、
私達はもう少し、気を使わなければいけないわけです。
脳の成長にとって良くないものは?
澤口俊之先生が1番にあげたものは、「食生活」でした。
2番目に「テレビ」をあげています。
特に、澤口俊之先生が注意したほうがいいとあげているのが、
「インスタント食品」です。
この「インスタント食品」には、亜鉛の摂取を妨害するものがあり、
これらのせいで、発達障害の子が増えているのではないか?という見解を示されています。
これ、2003年の本です。
このころで、発達障害の子の数は全体の6%と言われていて、
最近の本では、子どもの1割、つまり、10%が発達障害だと言われています。
100万人の子どもだと、6万人だったのが、
今では、10万人。
この15年で、そこまで爆発的に増えているんです。
澤口俊之先生の指摘は、重く受け止めたいですね。
発達障害の改善とは、
食生活とテレビ、なんですね。すでに、2003年に脳科学者が指摘しています。
けれど、発達障害の改善には、食べ物の改善!ということは、
2018年になっても、そこまで広がっていません。
それどころか、食べ物を改善しても発達障害は良くならない!と、
なぜか、言い張る専門家がいたりします。
よくよく考えると、
テレビのスポンサーには、インスタント食品を製造し、販売する会社も少なくありません。
この澤口俊之先生の指摘が、
テレビメディアを通じて広がることは、普通に考えてあり得ないですね。
じゃあ、どういったものがいいのか?
澤口俊之先生は、孫はやさしい、という言葉を使います。
孫=まめとゴマ
は=ワカメ
や=野菜
さ=魚
し=シイタケをはじめとしたキノコ類
い=芋
になります。
魚に含まれるDHAに関しては、
すでに、日本でこんな実験があったそうです。
キレやすい大学生の集団を集めて、
DHAの錠剤を毎日、飲んでもらうと、攻撃性の尺度を調べるテストが、どんどん下がり、
穏やかな人物になっていったのだとか。
ここで、ポイントなのが、
魚からとらなくても、難しければ錠剤でいいというところです。
このように、良い食材というのは、
きちんと人間にとっていいというデータが出ているわけですが、
まめ
ゴマ
ワカメ
魚
キノコ
芋
これらをそのまま使った食品を提供している大企業・・・・
というのはありませんね。
そう、だからこそ、発達障害の改善のための食事のことは、
自分たちで、我々が調べていくしかないんです。
脳科学者の立場で、
発達障害の改善を考えた時、
一番最初に出てきた言葉は、食事、生活環境の改善でした。
よく言われるような診断を受けて、
コンサータやストラテラのような薬を飲む、ということではないんです。
食事、なんですね。
そして、テレビのような脳に本当の意味で刺激を与えないものも良くない。
食べれば食べるほど、脳を傷つけるものを食べ、
脳の成長をうながさないテレビをただボーっと見るだけの生活。
そんな風になっていませんか?
2003年の時点ですでにこのような指摘をされていたことを、
私達はもっと大事なこととして受け取るべきだと思います。
最後にこの本の特徴を3つにまとめます。
1、簡潔
『発達障害の改善と予防』で、
澤口俊之先生の本は難しい!ってなってしまった人は、
まずは、ここから読みましょう。
わかりやすいですし、
こちらの疑問を1つ1つ阿川さんが質問してくれます。
2、進化
脳の進化についてが大半なのですが、
脳の役割や人類の進化を知ることで、
発達障害の根っこの問題が見えてきます。
発達障害が起きやすいのが人間の進化なのだということがわかります。
3、食事
食事についての記述は短いですが、
何を食べ、何を食べないほうがいいのか、すぐにわかります。
魚のDHAは、うつ病も防ぐ、ということなので、
発達障害の2次障害の予防にもこれらがいいことがわかります。
デメリットは??
基本的には、脳の話なので、
発達障害の話は、後半に少しだけです。
物足りない、と思われるかもしれません。
買ってよかった?
発達障害とは何か?
という本を数十冊買っても解決しないことが、
この本の最後の数ページで、一気に解決する可能性があります。
それくらい、簡潔で鋭い指摘がされています。
ただ、脳科学者の食事ついての見解ですので、
さらっとしている部分がありますが、
これから食事のこと、栄養のことを学んでいく上で、
最初の一歩となると思います。
そして、ブログも書籍も難しい澤口俊之先生の頭の中が、
阿川さんのおかげでとても見えやすくなっています。
発達障害は脳の機能障害。
ここから、発達障害の改善に向けて何かヒントはないか?
そう考える人にピッタリの本ですね。
※現在は、文庫版が出ていますので、当時の単行本の半額で買うことができます!