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岩波明先生の『発達障害』のレビュー〜知ることは受容すること。

 

岩波明先生の『発達障害』のレビュー〜知ることは受容すること。

 

 

発達障害とは何か?

 

現代の日本が抱える日本の問題とは何か?

 

 

発達障害の問題に真摯に向き合ってきた著者の、
発達障害を広く深く知るうえで、大切な1冊と言えます。

 

 

特に紹介したいのが、この本の最後のところです。

 

「本書では成人期の発達障害を中心に述べてきたが、児童期にADHDやASDの症状を示しても、軽症で問題行動がみられない場合は、見逃されていることが多い。きちんとした調査はこれからであるが、かなりの割合の発達障害が小児期においては見逃されている。
たとえば、ADHDで不注意症状を示す児童でも、「授業中に立ち歩く」「他の子供と頻繁にけんかをする」などの他人に迷惑をかける行動がなければ、教師は注意をしない。ASDにおいては、他の子供との交流が少なく孤立傾向がみられても、学習面で遅れがなければ、単に「おとなしい子供」として扱われているケースが大部分である。
児童期の発達障害に対する親の態度はさまざまである。わが子の症状について詳しく調べ、病院などに相談して積極的に治療や養育を望む人がいる一方、逆に発達障害の存在そのものを否定してかかり、教師や医師の説明に耳を傾けない人もみかける。「自分の家系に障害者が出ることなどあり得ない」と反論する親もいた。
そこまで頑なでなくても、症状が軽症の際には、なかなか発達障害という考えには至らないようんだ。単に「落ち着きのない子供」あるいは「おとなしく人付き合いが苦手な子供」とみなして納得していることもよくみられる。
しかし、親が発達障害をきちんと認識できているかどうかは、養育態度という面で決定的な違いを生む。子供の状態を「症状」によるものと考えるか、あるいは「気持ちの持ち方次第のもの」とみなすかで、子供に対する評価が大きく変わるからである。発達障害について認識していない親は、不必要に子供を叱責しかねない。このような意味で、早期の発見は重要であろう。
いずれにしても、子供に対する親の態度は子供の精神状態に与える影響が大きい。発達障害の認識がない場合においても、基本的な生活習慣はしっかり身につけさせる必要はあるが、親が本人の「症状」を受容してとがめ立てすることなく寛容に接することは、子供の成長にとって重要である。

 

『発達障害』著・岩波明 文藝春秋 2017年3月20日 発行 P251〜253

 

 

これは、おわりに、で書かれている、
発達障害に対する岩波明先生の思いを書かれた部分です。

 

ここに、共感ができるなら、
この本を手に入れることをおすすめします。

 

 

この本は、成人期の発達障害について詳しく書かれていますが、
それは、その根っこに、岩波明先生が、大人の責任も大きくて、
子供の様子が少し変わっているのを本人の努力不足のせいにしてしまう親に対する警鐘もある。

 

 

そんな風に私は思っています。

 

 

大人になって、

 

大人にならなくても、中学生になって、
高校生になって、大学生になって、
お子さんが、交友関係、新しい学校生活でつまづいたとき・・・・

 

それは、親である、親になる、
そんな私たち大人の責任だと言えるのではないか?

 

 

そんなメッセージがある。

 

 

そんな風に私は思いました。

 

 

 

『発達障害』の3つのポイントをまとめてみます。

 

 

1、発達障害とは?

 

ADHDやASDといった、よく紹介される発達障害だけではなく、
学習障害や、サヴァン症候群、そして、自分も発達障害かもしれない症候群といった、
いろんな発達障害に対する幅の広い洞察や、現代病と言える「自分も発達障害かもしれない症候群」といった、
幅広い発達障害に関することについて言及しています。

 

 

発達障害とは何か?

 

現代の問題とは何か?

 

発達障害の疑問に丹念に答えをくれる本になっています。

 

 

2、向き合う

 

発達障害と犯罪について、
長く、深い考察があります。

 

 

発達障害のお子さんを持つ人や、
私のように職業柄、発達障害のお子さんとたくさん向き合う人たちは、
ここを読むと、ずうんと心が暗くなるかもしれません。

 

 

でも、そこから逃げずに、
発達障害は〇〇だから、という無責任な明るい言葉に逃げずに、
真摯に向き合う著者の姿勢に、本の中身に引き込まれていきます。

 

 

最悪のケースを知りながら、
最高の結果を望む・期待する。

 

 

これは、大切な姿勢です。

 

 

この本は、発達障害を知りたい人にって、劇薬になるかもしれません。

 

 

3、具体例が多い

 

 

発達障害だと診断されず、うつ病や、パニック障害、といった、
違うものと診断され、自分が社会の中で生きにくい根本の原因がわからない・・・・

 

そういった発達障害の方の症例がいくつも載っています。

 

発達障害というのは、
私たちも誤解をしやすいですし、
医者の方々でも、実はとてもわかりにくいものであると言われています。

 

 

発達障害だと上手く診断されない人もいれば、
発達障害だと診断されて、本当の栄養の問題などが見過ごされてしまうケースがあります。

 

 

これに関しては、いくつかの本を紹介していますので、
そちらを参考にしてみてください。

 

 

 

 

この『発達障害」』の本では、
発達障害だと診断されない大人の発達障害の方の例が多くあります。

 

 

この具体的な症例は、
ケーススタディを知ることができるので、とても貴重です。

 

 

以上、3点がこの本の特徴です。

 

 

 

良いところばかりではないのでは?

 

 

発達障害の治療や改善方法、特に、食事の改善による、
発達障害の症状の改善・緩和についてはほとんど触れられていません。

 

どちらかというと、トレーニングによる、
発達障害の改善法が紹介されています。

 

 

こればかりは、その人の発達障害の捉え方、向き合い方がありますし、
成人されて、社会に適応できないという形での相談が多いと思いますので、
「栄養」「食事」などについての記述はないのだと思います。

 

 

1つの本が発達障害のすべてを網羅する必要もありませんから、
その面について期待して読むのはやめたほうがいいと思います。

 

 

買って良かった?

 

 

私は、この本は、
発達障害で悩んでいる人はもちろんのこと、
発達障害の人に悩まされたくはないと思っている人にも読んでほしいと思います。

 

子供の発達障害を助長する親の特徴や家庭の特徴なども、
この本を読んでいればわかります。

 

あなたは発達障害をきちんと理解していたり、
発達障害のお子さんの療育をきちんとされているかもしれません。

 

 

けれど、自分の子供もきちんと見られない親も多いんです。

 

 

それは、経済的に厳しいとかそういうご家庭ばかりではなく、
一見普通に見えたり、裕福に見えるご家庭でも、発達障害への理解が乏しく、
きつい発達障害の症状が出ているお子さんは少なくありません。

 

 

こういうことは申し上げにくいですが、
あまり仲良くしない方がいいと思える子供とその親も少なくありません。

 

 

塾など、お子さんに何らかのサービスを行う会社からしても、
発達障害の症状がきつい子供のいる家庭のご両親は、やはり、付き合いたくないと思う大人が多いです。

 

 

このような点からも、
この本は、すごく参考になります。

 

 

発達障害を何とかしたい方も、
発達障害への知識がなかったり、無理解で、
距離を取りたい家族・大人を見極めたい場合も、知識という力をくれる本だと思います。

 

 

発達障害 (文春新書) [ 岩波 明 ]

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