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愛着障害〜子どもたちの心に闇をつくってしまう家族とは??

 

愛着障害〜子どもたちの心に闇をつくってしまう家族とは??

 

タイトル:愛着障害〜子ども時代を引きずる人々
著者:岡田尊司
出版社:光文社
発行年:2011年9月20日
2016年12月5日 31刷

 

こういう系統の本が、31刷まで刷られるのは、けっこう異例だと思います。

 

岡田尊司さんの本というのは、
少し文学的な匂いのする作品が多くて、
その理由が分かった気がします。

 

 

愛着障害の例として、過去のいろんな文豪の例が出てきます。

 

 

おそらく、その方の作品も多く岡田さんは読まれていると思うので、
岡田さんが書かれる本というのはどこか文学的なんだと思います。

 

 

これが、アマゾンでの低評価レビューを呼ぶ一因なのかもしれません。
学がない人が読むと、なんとなく生理的な拒否反応を示すような気がします。

 

岡田尊司さんの本は、文章がなめらかすぎて、
どこか「冷たい」印象を私は受けていました。

 

その理由が、少しわかった気がします。

 

岡田さんは、発達障害と、愛着障害の表面的に見られる症状としては、
非常に似ていて、発達障害と愛着障害が間違われている、間違われるのではないか?

 

という現状をこの本で指摘されています。

 

 

2011年の時点で、過去のトラウマ、家族から受けていた子ども本人も気づかない傷が、
人の心にどれほどの影響があるかを深く考察した本です。

 

 

私個人の感想としては、
発達障害も、愛着障害も、改善や治療の方法は同じではないかと思っています。

 

 

心のケアという問題を含めて、改善・治療にあたっていくのが大切だと思っているからです。

 

 

この本では、愛着障害が発達障害に間違われやすいということが繰り返し言われます。

 

その奥には、
発達障害の治療や改善方法の多くが、薬であったり、トレーニングであったり、
そういう表層的なものばかりで、愛着障害の根本的な改善には効果がない。
そんな思いがあるのではないかと思っています。

 

 

そういう意味で、
世界に2冊だけと当サイトで紹介しているイーブックは、
発達障害の心のケアをきちんと念頭に置いた本になっています。

 

 

「うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった」の
藤川徳美先生が、医師の世界の学会誌よりも、
最新の情報は、本に出る、とこの本の中で書いていました。

 

 

まさに、今はそういう世界になってきているんだと、改めてこの本を読みながら感じました。

 

 

もちろん、愛着障害とは何か?というのがこの本の内容なのですが、
発達障害を根本から解決し、乗り越えるためには、心のケアの問題も意識していかなくてはいけない。

 

改めて、それを確認させられたというのが私の感想です。

 

そして、さらに、どんなに気をつけても、
「愛着障害」というのは、どの家庭にも起こる、と考えておかないといけないと思いました。

 

私は塾にいて、
「とてもいい子」が学校ではいじめられるという現実を何度も見てきました。

 

 

挨拶ができるなど社会的なコミュニケーション能力も高く、
もちろん、勉強ができる能力も高い、
そして、同世代にくらべて、何歳も精神年齢が高い。

 

 

親の愛情を受け、
すくすくと育った子が、公立の中学、高校に行くといじめられたり、
一部の学校カーストの中の上位グループから嫌がらせを受ける。

 

といったことが起こります。

 

つまり、まわりが何らかの愛着障害になっていると、
きちんとした親の元で、すくすくと育った子は、「マイノリティ」になります。

 

愛着障害になっている子は、なんらかの心の傷を持っていたり、
埋められない不安、不満を持っています。

 

 

でも、すくすくと育った子は、
そんな自分にないものをたくさん持っていて、うらやましいわけです。

 

そして、うらやましいという感情をその子に抱くことは、
愛着障害の子にとって、自分は満たされていないという現実を知るので腹立たしいことなんです。

 

 

だから、その「怒り」、理不尽な「怒り」が、
「マイノリティ」であるすくすくと育った子に向けられ、いじめ、という形になることがあります。

 

 

つまり、愛着の問題は、自身のお子さんを育てるために知っておかなければいけないことでもありますし、
愛着障害に気づかない大多数の他人から、お子さんを守るためにも、知っておかなければいけないことなんですね。

 

 

「愛着障害〜子ども時代を引きずる人々」を読むことで、
自身の子育てや、大人であれば、自分自身のトラウマを振り返ることはもちろん大切なんです。

 

 

そして、もう1つの視点として、
まわりの他人がこういう障害を持っていて、そこから身を守る意識も必要だということです。

 

愛着障害を持っている人がいたら、その人となるべく距離を置いたり、
重度の愛着障害が多いであろう、公立の学校を避けて、私立の学校を選んだり、
そういう道はたくさんあるんだ、ということを知っておく、探しておく、ということをしたり、
そういうことも必要なんだと知っておくべきだと思います。

 

 

私はこの本を読んで、自分の子育てを気をつけようという思いのほかに、
愛着障害を引きずる多くの他人がいる世界を生きているわけなので、
言葉は悪いですが、自分の、自分の大切な人の害になるような人は避ける道も探しておく必要がると知りました。

 

 

では、この本の3つの特徴を述べます。

 

 

1、わかりやすい

 

新書にしては、文字量が多く、
情報の量が圧倒的に多いのですが、非常にわかりやすいです。

 

科学的な分析、
こういう状態の時に、脳からは○○ニンという物質が出て・・・・

 

という情報を極力抑えて、
こういう家庭環境で育つとこんな風になる、こんな風に育った、
という事例を多めに書かれています。

 

 

聞いたことがない、
見たことがない、
そんなカタカナ用語がかなり抑えてあるので、
非常に、愛着障害がわかりやすく読めます。

 

2、祈り

 

岡田尊司さんの本すべてに言えるんですが、
この本には「祈り」「願い」が込められているように思います。

 

この本には、たくさんの有名な方が出てきます。
大半が、歴史的にも有名な人。

 

 

そんな人たちも、愛着の問題で苦しみ、
そして、それを乗り越えるたびに、
世に認められる作品を出してきたんです。

 

 

発達障害を持つ人を、アメリカではチャレンジドと呼びます。

 

 

発達障害を克服する、
その人にしかできないチャレンジを与えられているという意味です。

 

そして、その先には、その人しか見られない、
素晴らしい景色がある、そんな願いが込められています。

 

 

岡田さんは淡々と紹介されていますが、
これだけ多くの有名人が、愛着の問題を抱えながら懸命に作品を世に出してきたという事実は、
私たちに勇気をくれます。

 

 

愛着の問題を自覚し、受け止め、それを乗り越える、
その中で、その人にしか生きられない、表現できないものというのが見えてくるのかもしれません。

 

 

3、克服の過程

 

新書の問題点として、
実はこういう問題があるっていう、
今、現在起こっている問題の解説は詳しいんです。

 

 

なぜ、その問題が起こるのか。
なぜ、その問題は社会的に問題なのか。
そのまま放っておくとどうなるのか。

 

そして、最後に、ちょろっとだけ、
私はこういうふうに、その問題を解決した、という例が載ります。

 

 

解決部分の考察、紹介が少ない場合が本当に多いです。

 

 

でも、この「愛着障害」では、
愛着障害の回復、克服も、
丁寧に書かれています。

 

問題の提起や、問題の所在と同じくらい、
どうやって、愛着障害を人々が乗り越えていったかという部分も、丁寧に描かれています。

 

 

この部分は、本当に素晴らしい部分です。

 

 

デメリットは??

 

内容的にはありません。
1000円もしない価格なので、
その価値しかないと思われているかもしれないというのが心配ですね。

 

 

買って良かった?

 

 

発達障害のことを知ろう、調べよう、
もしくは、お子さんの発達障害を予防したいと考えているなら、
買って良かったというレベルではなく、買わなければいけないというレベルですね。

 

 

発達障害と愛着障害は、
おそらく、絡みついて遺伝子のように螺旋構造を持っていると思います。

 

どちらか一方だけでの治療では、
根本的な解決はできないと思っています。

 

発達障害を持っている方が、
家庭の事情や自分の発達障害の体験談をコミックエッセイや、
漫画をブログで公開されるのは、愛着障害の克服をしようとしているのかもしれません。

 

 

発達障害は心の問題の克服もとても大切です。

 

 

その原因が、「愛着障害」にあるのかもしれません。

 

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書) [ 岡田尊司 ]

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