『光のお父さん』を読んで〜家族はいつからだって再生できるという【レビュー】
『光のお父さん』を読んで〜家族はいつからだって再生できるという【レビュー】
あなたは、
『光のお父さん』という本を知っていますか?
簡単に中身を話すと、
これまで父親とまともに話したことがなかった息子が、
父親が胃がんで入院する姿を見て、「この人が死んだとき、自分は泣けるのか?」という、
自問自答から物語は始まります。
そこで、ゲーム好きの父のために、
ファイナルファンタジー14というオンラインゲームを買ってあげて、
そこで、自分は息子であることを隠しながら、父と一緒にゲームの中で旅をして、
ある日、自分は父ですと告げるという【ある意味壮大な親孝行の物語】なんです。
※オチも素晴らしく、ホロリと泣けるのがいいです。
この本を読んで、
私は家族はいつからだって、再生できるということを知りました。
そう、家族はいつからだって、やり直すことができますし、
家族はやり直さなくてはいけないのだと思います。
いつまでも同じ家族ではいられません。
子どもも成長していきますし、自我があります。
そして、小学校、中学校、高校、大学、社会人、
というように子ども自体もそれぞれのステージを上がっていきます。
だからこそ、
家族はずっと同じままではなく、
その時、その時で、形を変えていくこと、
つまり、「再生」していかないといけません。
発達障害の改善というのは、
この【光のお父さん】の家族のように、家族をもう一度、「生きなおす」ことが必要です。
作者であるマイディーさんの凄いところは、
この【光のお父さん】計画を思いついたことだけではなく、
きちんと、やり遂げようとしたこと、です。
しかも、読んでいくとわかりますが、この計画は数カ月以上にわたっていきます。
お父さんに基本操作を教え、
自分をフレンド登録してもらい、
チャット機能も使いこなしてもらい、
そして、上級者でも死んでしまう高難易度ダンジョンに挑む。
著者のマイディーさんは、
【光のお父さん】計画を決して焦らないし、
自身も楽しみながら、父親の変化を前向きにとらえていく。
そして、自分が気づかなかった、気づこうともしなかった、
お父さんのこと、お母さんのこと、自分の家族のことに気がついていきます。
「生きなおす」というのは、
自分と相手の新しい面に気づくということなんです。
相手を変えようとすることだけではありません。
自分自身の変化も受け入れていくのが、「生きなおす」ということです。
そして、新しい面に気づく、というのは、
元々あった、本当は見えていた、その人の性格や優しさや強さに気づくことなんです。
発達障害のお子さんで困っているお父さん、お母さんは、
その子の「嫌なところ」「ダメなところ」「なおしてほしいところ」ばかりに意識がいっています。
でも、マイディーさんは、
父親のいいところ、
父親の愛嬌のあるところ、
父親の知らなかった面白いところ、
そんな父親の新しい一面を1つ1つ前向きに捉えていきます。
この本を読んで大事なことだとわかるのは、
マイディーさん自身が、変化し、積極的に父親と関わろうとしているという姿勢です。
マイディーさんが、父親のことをあまりよく思っていなかった時、
彼も父親も、上手く人間関係が築けません。
コミュニケーションがうまく取れないんです。
でも、マイディーさんが父親をわかろうと思ったとき、2人の関係は一気に改善されていきます。
相手をわかろうとするとき、一気に、人間関係は好転していきます。
でも、人間はそんなに簡単に分かり合えるものでもありません。
マイディーさんとお父さんは、オンラインゲームの中で、
同じ時を数カ月以上過ごし、改めて家族というものを築いていくんです。
(というか、マイディーさんが、父親を理解していくんですけど)
この話は、お父さんへの親孝行の物語であり、
実は、作者が、父を理解し、家族を理解し、自分自身の認識をどんどん変化させている物語なんです。
物語の主役はお父さんではありますが、
ゲームの中で、父親と接する中で、今までの自分の思いに気づき、
父親の存在を捉えなおしている著者のマイディーさんの姿に、私たち読者は触れることができます。
そして、わかるんです。
家族はいつからだって、やり直せる。
発達障害の治療も、
家族でわかりあっていくことも、
1日、2日では解決しません。
相手をわかろうとする気持ち。
これがなければ、
発達障害の診断をもらおうと、有名な病院やクリニックを渡り歩いても、
きっと、あなたはお子さんの発達障害を知ることはできないと思います。
それは、あなた自身が歩み寄ろうという気持ちがないからです。
人は自分で「変わろう」とした時だけ変わることができます。
人を変えることはできません。
あなた自身が変わるしかありません。
そして、いつだって、いつからだって、私達は変わることができるんです。
改めて、家族の再生の物語を読むことができて、
そう思えたことが、この本の最大の良さだと思います。
デメリットもある??
褒めちぎると、
それはそれで胡散臭いので、デメリットも1つだけ。
カラーの画像がふんだんに使われているので、
ソフトカバーの書籍としては少し高いです。
2000円弱しますし、内容のボリュームもそれほどあるわけではありません。
少し物足りないと思う人もいるかもしれません。
買ってよかった??
私は、こんな素敵な家族の再生物語に出会えて、本当にうれしかったです。
オンラインゲームを通じて、
父親と息子がわかりあっていく。
そして、新しい世界を受け入れていくお父さんの前向きな姿にも感動します。
新しいことをする、
新しい世界に踏み出す、
新しいことをする一歩を踏み出す、
この本には、
これまでの日本の古い家族の形を壊すインパクトと、
それでも、親子で会話があることの素敵さ。
人はどうやっても、どんなことをしても、どんなツールを使っても、
理想を手に入れられるということ。
そして、マイディーさんの新しい一歩を踏み出すことに、ためらいがない姿勢。
今を生きる人のために、今、好きなように生きていいんだという希望をくれる本でした。
この本には希望があり、勇気があり、そして、自分と他者との「再生」が描かれます。
その言葉にはできない人間というものの「暖かさ」に触れられる本でした。
まだ、読まれていない方はぜひ、読んでみてほしい本です。
いつだって、家族はやり直せる。
発達障害の改善は、家族を「生きなおす」ことだと私は考えています。
家族の再生の1つの物語を私たちは教えてもらえるんです。